ご挨拶

堀 照夫

新たなる出発 ~100周年事業を終えて~

福井大学工業会理事長 堀 照夫

(繊維染料S44年卒業・繊維染料専攻S46年修了 福井大学客員教授)

 一昨年2023年12月9日、工学部は創立100周年を迎え、祝賀会を挙行しました。昨年7月20日には「100周年記念大会」が催され、約600人が参加し、大盛会でした。両式典では、「新制・福井大学 第一期生」で建築科教授を勤められた川上英男先生(本学名誉教授)と、福井工業大学で教鞭を執られている市川秀和教授に記念講演をしていただきました。ご両名の緻密に調査された歴史資料と工学部を思う熱い気持ちに満ち溢れたご講演は万感胸に迫る思いで、大きな感動を覚えました。
 約5年前から準備を進めてきた「福井大学工学部創立100周年記念事業」は、無事終えることができました。工業会会員の皆様には絶大なるご支援・ご協力を賜わり、理事長として心より深く感謝申し上げます。寄附金につきましては目標額には届かなかったものの約3.5億円が集まり、「工学部100周年記念館」が建設され、また、500ページにも及ぶ「工学部百年史」も刊行されました。切に望んでいます工学部活性化のための事業費4千万円を捻出するためにも、引き続き皆さまのご支援をお願い申し上げる次第です。
 ところで、人口減少による今後の大学の在り方は決して楽観できないと言われています。2024年度の旺文社の集計によると、数年前まで86校あった国立大学は統合などより82校(全大学数の10%)で、この傾向は今後も続くものと思われます。その他、公立大学は95校(12%)、私立大学は592校(74%)で、その他に専門職大学(4%)があります。
 次に学科数を見ると、国立大は「情報、機械、電気、化学などの理工系」が上位を占め、教員養成課程が続いています。一方、私立大では「経営、商学、会計学などの文系」が上位を占め、その他、語学、医療などが続きます。
 以上のように、学科数や分野の占有から見ても分かるように国立大学は理工系が多数であります。理工系は学科設置費用が高くつくことが主な要因です。
 また世界を見れば、2024年度の “日本のGDP” はドイツに抜かれ4位に転落、5位のインドとの差は僅差になっています。そして“国民1人あたりのGDP”では2000年の2位をピークに、2022年はG7で最下位に転落、2024年は韓国にも抜かれ、22位に甘んじています。日本人はこれらの数字をあまり気にすることなく平和な国と思っているかも知れませんが、状況はどんどん悪くなっています。島国である日本人には状況の良くない日本が見えていないように思われます。
 こんな中、本学工学部は次の100年に向けてどのように活性化を図ってゆくのか、大学や企業が関わる政府の研究開発重点分野はいくつかの分野に絞られています。デジタル、グリーン、人工知能、量子、バイオおよび宇宙です。世界が目指す分野であり、それぞれ納得のゆく分野で、いくつもの国家戦略となっています。半導体・デジタル産業戦略、量子技術イノベーション戦略、カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略、AI戦略、バイオ戦略、宇宙基本計画などです。
 技術立国と言われてきた日本は今大変な危機にあります。政府が掲げる研究開発重点分野は、いずれも幅広い工学分野をカバーする「福井大学工学部」が取り組める分野であります。これからの100年に向かって、工学部は今が、これらの分野での再出発の時かと思います。

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